こんにちは!モルタルは友達、ブロック職人のほろです。(ちゃんとした人間の友達もいるので、ヤバい人じゃありません。)
この記事では、フェンスの柱を立てる時に使うモルタルについて、より適切な柔らかさに調整する事で得られる様々なメリットと、その具体的な方法、そうする理由について詳しく解説してみようと思います。
モルタルの”柔らかさ”とは、言い換えればモルタルを練る際の水分量を意味します。
モルタルは、練るときの水分量を調整することによって、水分が多いほど柔らかく、少なければバサついた状態になります。
柔らかいモルタルはバサついたものに比べて流動性が高いので、柱の周りに隙間なく充填するのはとても楽(手間が少ない)ですが、その反面固まるまでの時間は長くかかります。
それと、柔らかいモルタルほど周りを汚しやすい性質なので、必要以上に柔らかくすると後から掃除が必要になったり、逆に仕事が増えてしまう、というリスクも出てきます。
反対に、水分を少なくバサついた状態に練ったモルタル(バサモル)は、柱の周りに隙間なく充填するのに手間と時間がかかりますが、早く固まる(柱が動かなくなる)という利点があります。
ただし、中途半端に固まった時に動かしてしまうと柱とモルタルの密着が悪くなり、あとでガタつきが出てしまう事にもなりかねないので注意が必要です。
では、何を基準にモルタルの水分量を調整したら良いのでしょうか?
僕が実際の経験から、フェンスや門扉などの柱立て作業をする時の、モルタルの柔らかさを決める時に役立つ判断ポイントを4つにまとめてみました。
柱立ての条件に合わせて、最適な柔らかさのモルタルを調整出来る技術が身につけば、仕事の効率は大幅に上がり、時間にも余裕ができるので丁寧な作業ができ、さらには人件費の削減にもつながる、など良いことずくめですので、ぜひこれから紹介する4つのポイントを参考にしてみてください。
極端に水分を少なくしたバサモルを使ったり、水を全く加えない空モルタルを部分的に使うのも、とても上手くいくやり方の一つとして紹介しています。
モルタルの柔らかさを決める4つのポイント
モルタルの柔らかさを決める時には、僕は次の4つのポイントを考慮に入れて判断しています。
- 柱を立てる穴の大きさと柱のサイズ
- モルタルが接する穴の内側面の吸水性と、湿り具合
- 立てる柱の断面積と柱の重さ
- 柱の高さと風の強さ(モルタルが硬化する間に柱が受ける風圧)
ではここからは、それぞれを判断するポイントと、その理由、具体的な方法について詳しく見ていきましょう。
柱を立てる穴の大きさと柱のサイズ
これはフェンスの柱のサイズに対して、穴の大きさはどれくらいの余裕があるか、という事です。
言い換えると、柱の周りにどれくらいの量のモルタルが入るのか、というのがポイントとなります。
柱のサイズにちょうどいい大きさの穴の場合は、比較的早くモルタルが固まってくれますが、柱に対して穴が大きめの場合はモルタルの厚みは厚くなり、厚くなるほどモルタルが落ち着く(初期の硬化)までの時間が長くかかります。
穴が大きいほど、モルタルの量が多くなるほど柱が固まるまでに、より時間がかかるわけです。
つまり、柱に対して穴が大きめの場合は、モルタルを柔らかくしすぎないのがここでのポイント。長い時間待たなくてはならなくなるのを避けるためには、少し硬めに調合する必要があります。
またこれとはちょっと違った発想で、柔らかいモルタルで施工する方法もあります。
(※柔らかめのモルタルの目安として、柱を差し込む際少し体重をかけると簡単に下がるが、柱の自重では下がらない程度。)
柔らかめのモルタルを充填して柱を垂直に調整した後に、セメントの粉を振りかけ、モルタル表面の水分を奪って素早く固定する、という裏ワザ的な方法がこれにあたります。これは本当に画期的で、ほとんど魔法みたいにすごいです。
この方法は、内部のモルタルが固まってくるまでの間、一時的に柱を動かなくする為の手段なので、セメントを振りかけた後はしばらく放置するのがとても重要なポイントです。粉をかけたらしばらくの間いじってはいけません。
内部が固まる前に表面をいじってしまうと、せっかく動かない状態だったモルタルがまた緩んでしまい、柱が傾いてしまうからです。セメントのノロは周りをとても汚しやすいというのも、しばらく放置しなければいけない理由のひとつです。
いじっちゃダメ。これが重要。
セメント振りかけ式のコツは、セメントを振りかける前に、モルタルの量を柱周りにすこしふっくらと盛り上げるくらいにしておくこと。(柔らかめのモルタルは、余計な水分が奪われる分、固まった時に量も目減りしています)
その後しばらく放置して別の作業をして、内部のモルタルがある程度固まって柱が動かなくなった頃合いをみて、柳葉コテで表面のセメント(水分を吸って半乾きのペースト状になっている)と余分なモルタルを取り除くと同時に柱周りをコテで綺麗に仕上げる、というのがとても上手くいく方法です。
(雨の日はこの方法は出来ないのでご注意)
凹んだ表面にモルタルを足しながら仕上げるよりも、少し盛り上がったモルタルを削りながら仕上げる方がずっと短時間で作業が終わります。
モルタルの固まり具合を見ながら、【柱は軽く触って動かない程度、モルタル表面は簡単に削れて、コテで圧縮すればきれいに仕上がるタイミング】を見計らってコテ押さえします。
通常待ち時間には他の作業をしますが、他に作業が無いような場合はスーパージェットなどの早強セメントを利用するとあっという間に固まるので、すぐ次の作業に取りかかれます。早強セメントは僅かな使用量で大幅な時短が可能なので、即もとが取れます。
穴の内側面の吸水性と湿り具合
これは、穴にモルタルを入れた時にモルタルが直接触れる穴の内側面の材質と吸水性=モルタルの水分がどう変化するかを予測して決めるということです。
特に、乾燥したブロックの穴に柱を立てる場合は、ブロックの穴の内側面はモルタルからどんどん水分を奪います。
夏の炎天下などとても乾燥が早いときは、ブロックを予めたっぷり水をかけて濡らしておかないと、モルタルの乾燥が早すぎて脆くなってしまうという心配もあります。(モルタルやコンクリートは硬化する過程である程度の保湿が必要。土間打ちの翌日に水を撒いたり、コンクリート型枠を打設後しばらくバラさないのも早い段階での乾燥を防ぐため。)
この、穴と接する面のモルタルの水分が奪われる現象を上手く予測し、調整できるようになると、施工性の良い柔らかめのモルタルを、より効率的に使うことが出来るようになります。
例えば、10センチのブロックにH800くらいのフェンス柱を立てる場合は、柱の周りのモルタルも多くないので、柔らかめのモルタルでもけっこう早く落ち着いてくれます。(完全硬化ではないが、多少の風くらいでは動かない状態)
反対に、あまりないパターンかも知れませんが、金属や塩ビパイプの中に柱を立てるような場合は、モルタルの水分が奪われる要素が全くないので、さほど柔らかめにする必要はありません。
また、雨上がりの時など穴の中に水が溜まってる場合には、溜まった水は必ずスポンジかウエスを使って取り除いておかないとダメです。
僅かな水なら、少しカラモルを振りかけて水気を無くす事も出来るかも知れませんが、1〜2センチ以上溜まっている場合、空モルを入れても入れても意外とユルユルになってしまいます。(一度試してみるといいでしょう)
基本的に溜まった水は取り除く事を考えてください。横着すると逆にハマる結果となってしまい、余計に時間がかかってしまいます。
それと、そんな日のブロックの穴はたっぷり水分を含んでいるので、周りからモルタルの水分が奪われて固くなる要素がありません。通常より水分少なめ、バサついたくらいの感じのモルタルを使いましょう。
柱の断面積と柱の重さ
断面積とは、輪切りにした時の切り口の面積の事です。念のため(笑)
断面積と柱の重さを考慮する理由は、穴にモルタルを入れてから柱を差し込む、という方法で施工する場合に、柱を沈める時に柱が「下がるまい!」と抵抗する力が全然違うからです。
例えば、Hが高い目隠しフェンスのアルミ柱などは風圧に耐える強度を出すためにアルミ形材自体がかなりゴツく、断面積がとても大きくなっています。
このような断面積の大きなタイプの柱は、シンプルな角パイプや丸パイプ柱に比べて、柱断面が踏ん張る力がとても強く、びっくりするくらい沈めにくくなります。
どれくらい沈まないかを、ぼくが思い知る事になった例をひとつ紹介します。
H1800の目隠しフェンスのアルミ柱を、独立基礎の穴に立てた時の事です。
柱サイズ70角に対してあまり余裕の無いサイズの独立基礎で、穴の下の方が85mmほど(独立基礎は下に行くほど穴が狭くなる)だったと思います。柱周りにほとんど余裕がありません(笑)(独立基礎の周りがアスファルトでガッチリ固められる造りだったので、小さめの独立基礎を使う設計だったのかも知れません)
柱の埋まり深さは300だったのですが、モルタルをかなり柔らかめに練ったつもりなのに、自分の全体重をかけても全然沈まなくて苦労した事があります。穴の大きさがギリギリだったのも大きな要因のひとつですが。
穴のサイズに余裕ある場合は、ゴツいアルミの角柱などは自重もそこそこあるため、全部柔らかいモルタルを充填してしまうと柱が沈みすぎてしまう事もあるので、周りに入るモルタルの量(穴の大きさ)も合わせて考慮する必要があります。
柱が一度沈みすぎてしまったら、本来の高さに浮かせて固定するのは難しくなってしまいます。
沈みすぎ防止の方法としてオススメなのは、あらかじめ柱の埋込み深さより1〜2センチ低めくらいまで空モルを詰めておく。そうすると、柔らかめのモルタルを投入した際に空モルと接する面の水分が奪われて少し硬くなるため、柱の高さ調整がしやすくなります。
今説明した、断面積の大きい柱とは反対に、ネットフェンスのコーナー柱や、高さのあるスチールの環境フェンスのような、重くて断面積が小さめの柱の場合は、柔らかいモルタルだと自重でどんどん沈んでしまうため、初めからバサモル(バサついてるけどギュッと握ると固まるくらいが目安)を使った方法が施工性が良いので、とてもおススメです。
例えばこんな具合です。
まず、柱の埋め込み深さぴったりの高さになる様に、バサモルを角材などで突きかためておきます。そのあと、バサモルを仕上げ面までフワッと入れてから、重くて断面積の小さな柱を差し込みます。規定高さまで下がらない場合はグリグリ小刻みに回しながら体重をかければ下がると思います。
柱の位置を正確に出すのが難しい場合は、床を作ってから柱を先に入れ、バサモルは後から柱の周りに詰めていきます。
この時、バサモルは一気に表面まで入れずに、柱の垂直を確認しながら、3回くらいに分けて鉄筋棒や細めの角材などで柱の周りを突きかためます。
突きかためながら柱の垂直を決めたほうが、下の方までモルタルがしっかり圧縮され、密度が高く固まった時の強度も増します。
表面より2〜3センチ下がったくらいまで突きかためたら、少しだけ水をかけて、(十分湿っていれば不要)表面仕上げ用として、今使っていたバサモルに僅かに水分を加えて(バサモルとモルタルの中間くらいのイメージ)、柳葉コテの様な小さくて硬めのコテで圧縮しながら、表面をギュッと押さえると、一発で仕上がるので、この方法はとてもオススメです。
以前僕が施工した現場で、材料の手違いのために、1週間後にやり直す事が決まっていながらも、その日の内に門柱を仮に施工しなければならない、という事がありました。
翌週、仮施工の柱をなるべく簡単に壊せるようにと、バサモル(大きめのバケツ3杯くらいの量が必要だった)だけで柱を突きかためて仕上げた事があるのですが、いざ、1週間後にハツリ解体してみると、驚くほど硬く仕上がっていて、ほとんど普通のモルタルと変わらないくらい頑丈で、バサモルなのにこんなに頑丈になっちゃうのか!とびっくりした事があります。
つまり、しっかりと圧縮した正しい調合(セメント・砂・水)のバサモルは、モルタルとほぼ変わらないレベルの強度になる事が、実体験としてわかりました。
柱の高さと風の強さ
柱の高さと風の強さとはとは要するに、柱を立てた後に外部から加わる力がどれだけあるか、と言うことです。
柱立て作業の日には(どんな作業もそうですが)風は無いに越したことはありません。
柱の高さが高いほど、当然風の影響を受ける事になります。が、高い柱ほど埋め込み深さが深めに設計されているので、台風や春一番みたいな強風でなければ、なんとか施工する事ができると思います。
ここでも、一番初期強度が高いのは、初めからバサモルを圧縮しながら柱の周りを固めていく方法なので、本当に風で作業がやりにくい場合はこの一択になると思います。
バサモルを使う際に肝心なのは、砂とセメントの割合と、やはり一番は水加減です。
それと、確実にしっかり圧縮する為には、柱と穴の間に入るちょうど良いサイズの突き固める棒を用意する事です。
ちょうどいいものが無ければ、サンギ(約25×50mmの角材)などを用意して、スキマに合わせて切って丁度いいサイズの断面を作るのも良い方法です。
バサモルをさらに早く硬化させたい場合は、水を加える前の空モルの時点で、スーパージェットなどの早強セメントを多めに入れるのも(つまりスーパージェット入りのバサモル)、かなり早く柱の強度を出せる手段の一つだと思います。
以上、長くなりましたが、僕がフェンスの柱を立てる時にモルタルの柔らかさを決める時に判断するための、4つのポイントについてでした。
一気に全てを覚えるのは無理かもしれませんが、かなり重要な要素を詰め込んだ内容だと思いますので、機会があれば少しづつ試して実践してみてください。
またここであげたポイント以外にも、その日の気温(夏と冬では固まる早さが全然違う)、天候、スーパージェットセメントなどの早強材を使うか使わないか、フェンスのパネルをその日の内に取り付けるか(目隠しの様な風を受けるパネルか、風を通すか、パネルのタイプも非常に重要な要素)、作業のしやすさやなども考慮に入れて決めると良いかと思います。
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